「認知症に寄り添う」家族で出来る介護のカタチ

認知症に寄り添う

最近お母さんの物忘れが酷くて、もしかして認知症じゃないかしら

物忘れは誰にでもありますのでそれだけで認知症と判断するのは早いですよ。

じゃあ認知症はどういうものなの?

そうですね、では認知症が具体的にどういうものなのか一緒に見ていきましょう。

認知症とは

認知症とは英語のdementiaの日本語訳であり、以前は痴呆症と呼ばれていましたが否定的な意味合いを含むとして認知症と呼称するようになりました。

国際疾病分類第10版(ICD-10)の定義では『通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等多数の高次脳機能の障害からなる症候群』とされています。

つまり認知症とは一度正常に発達した知的機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態のことを言います

認知症の症状

認知症の症状は中核症状と周辺症状に大別されます。

中核症状とは認知機能の障害による直接の症状であり記憶障害、見当識障害、失語・失行・失認、遂行機能障害などの障害であり、認知症全般に出現します。

一方、周辺症状とは中核症状に付随する精神症状と行動障害でBPSDと呼ばれます。これらは環境や対応、薬物治療により改善が期待できます。

認知症高齢者数は増加の一途をたどっており、病院や施設での支援だけではなく、地域や住み慣れたお家で生活をするために家族や他職種協働で支援していく事が求められています。

 

認知症かも?

認知症かどうか確かめる方法はありますか?

診断には医療機関で遺伝子検査やCT、MRI、PET、SPECTなど生物学的指標により、客観的かつ科学的な診断基準が設定されています。

はじめは家族や友人、同僚など一緒に過ごしている人たちが「同じことを何度も言ったり聞いたりする」「忘れ物が多くなった」「怒りっぽくなった」といったいつもと違う現象への気づきから始まります。

それまで出来ていたことが出来なくなり、こういった初期症状に対して本人は次第に焦りや強い不安を感じるようになります。

初期症状と簡易検査

日常生活上の変化としては、

①同じ事を何度も言う(聞く)

②置き忘れ、しまい忘れが多くなる

③以前あった興味・関心がなくなった

④時間や場所が分からなくなった

⑤感情の起伏が激しくなった(怒りっぽくなった)

⑥物を盗まれたと言うようになった

などがあります。

簡易的な検査としてHDS-R(改定 長谷川式簡易知能評価スケール)があります。

日本で最も普及している認知症診断のための知能検査で、1974年に長谷川和夫氏(聖マリアンナ医科大学名誉教授)によって開発されました。

この検査方法は、その後1991年に改訂されたため、現在では改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)と呼ばれ、全国の医療機関で広く使われています

改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDSーR)

HDS-Rは全て言語で回答を求める言語課題であり、30点満点で20点以下を認知症の疑いありとする。

検査項目は

自己の見当識「年齢を問う」

時間に関する見当識「月、日、曜日、年」

場所に関する見当識「ここはどこか」

作業記憶「3単語の直後再生」、「数字の逆唱」

計算「計算」および近時記憶の干渉課題

近時記憶「3単語の遅延再生」

非言語性記銘「5品の視覚的記銘」

前頭葉機能「野菜語想起」

認知症の方への対応

認知症の方は次第に環境の変化や対応できない苛立ち、できないことの辛さから抑うつ状態になったり人との交流を避けるようになります。

そして自分なりになんとかしようとすることで周辺症状やBPSD(行動症状)が現れてきます

また、認知機能の低下から感情をコントロールしたり抑制が出来なくなり、粗暴な言動や依存性が高くなります。

特に行動症状は介護者の負担を大きくし、家庭介護を困難にする要因です。

行動症状の要因

認知症の中核症状には記憶と見当識の障害がありますが、記憶障害とはこれまで歩んできた、そしてこれから歩んでいく過去から未来へと繋がる道が足元から崩れていくように近い過去の記憶を経験したそばから忘れてしまうことです。

そして見当識は今と過去との間断のない照合作業によって保たれているためそれが出来ないと見当識障害を起こしてしまいます。

「何をしていたのか分からない」と「何をしないといけないかも分からない」状態となり、「ここはどこ?」「今はいつ?」「あの人は誰?」となり、ついには「私は誰?」となってしまいます。

もしご自分がそのような状態に陥ったらと想像してみてください。

・・・とても怖いです

そうですね。どれだけ怖い事なのかは私達でも簡単に想像できます。

認知症の方自身には自分の状況を正しく認識できないためその恐怖心は漠然とした不安感として感情に常に影響を与え続けることになります。

また、まだ記憶障害の影響を受けていない本人の中の世界と現実の世界とのズレも不安感を助長する大きな要因となります。

これらの不安感が、焦燥や落ち着きのなさ、徘徊、不条理な怒りの表現、険しい表情や攻撃性といった行動症状を生み出してしまうと考えると、それらの行動に納得がいくのではないでしょうか。

不安感の解消

アルツハイマー型認知症などによく出現する行動症状。落ち着きなく徘徊を繰り返す場合や不穏・興奮状態になりやすい場合はリスクの点からも介護が困難となります。ではどうすれば行動症状を軽減する事が出来るのでしょうか。

不安感の解消に有効な手立てを探し出すには、認知症高齢者自身が自己をしっかりと認識できるいわばその人らしさを出すことのできる活動を探し、提供すると言う視点が必要である。

この時参考になるのがかつてしていた仕事や家事、趣味や特技といった、いわゆる昔取った杵柄の視点である。

ではなぜ昔取った杵柄の視点に基づいた活動は、不安感を解消に有効と言えるのであろうか。

それは認知症高齢者にとってみれば、「知らないこと」「できないこと」だらけの不安に満ち溢れた世界で現れた「知っていること」「できること」であり、その活動に身をおくこと、行う事は安心できるからであると考えられる。

そもそも認知症高齢者の行動症状は他人から見れば支離滅裂な行動かもしれないが本人にとっては自身の不安状態をなんとかしようとして行っている何かであるとも考えられなくはない。

おむつ交換をしようとすると叩いたり暴れたりしてさせないといった、いわゆる対象者本人による介護への抵抗はなぜ起こるのかと言えば、見ず知らずの他人によって突然わけもわからず自分のズボンやパンツが流されそうになっていると認知したからである。

そう考えると必死の思いで抵抗するのも当然だと納得がいく。

このような考え方で全ての行動症状が理解できるわけではないが、一般に意味不明な異常行動と片付けられがちな認知症高齢者の行動も、決して理解不可能では無いことをわかってほしい。

対応のポイント

・視野に入って話す  ・挨拶をする、名前を呼ぶ  ・自己紹介をする(名乗る)

・聞く姿勢を見せる  ・分かる言葉で簡潔に伝える  ・穏やかに低いトーンで話す

・少し待つ(時間にゆとりを)  ・感情に働きかける  ・否定や訂正はしない

・自尊心を傷つけない  ・役割や出番をつくる  ・失敗はさりげなく助け、見守る

・思い出話をする

出来ること、出来ないこと

まずは身辺処理や生活を通して出来ることは自分でやってもらう励ましながら、出来ないことに対してやりやすい方法を考え、練習したり介助したり、生活に寄り添うことが大切です。

安心出来る暮らしやすい環境づくりを通して、認知症とともによりよく生きる

 

認知症予防

1.生活習慣病を予防・治療する

認知症の出現は血圧の変動と関連する事が明らかにされている為、何より高血圧の治療と血圧の安定化が重要です。

また、高血圧や脂質異常症、動脈硬化などの予防の為に、塩分や動物性脂肪の摂取制限、禁煙も欠かせず、基本的には生活習慣病の予防です。

心疾患や糖尿病も脳血管障害の危険因子であり、治療が必要です。

 

アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣から引き起こされる病気との関連が強く、それらの予防や治療は、確実に間接的な認知症予防となります。

すでに生活習慣病にかかられている場合は適切な治療を受け、そうでない場合は定期健診を受けるなど、生活習慣病の予防に励みましょう。

2.運動する

生活習慣病予防としても運動は大切なのですが、そもそも体を動かすのも脳が機能しているから。つまり、運動で脳を刺激することにもなるのです。

また、腰や関節などの運動器に疾患があり痛みや動きの制限があると、生活の幅が狭まり、認知症になった場合、症状が急激に進行してしまうことも多いのです。

運動習慣を身につけ、きちんと栄養を摂って筋肉づくりをするなど、体のメンテナンスを行いましょう。

3.達成感を味わう

どんなに優れた予防法でも、認知症予防というのは目に見える成果があるとは限りません。成果が見えないものに漫然と取り組むのはつらいものです。

作品が残る、記録に残すなど、これまでの取り組みが目で見えるような工夫があるとよいでしょう。

4.他人と交流する

人間は社会的動物といわれます。他人との交流がなによりも脳を刺激し、生活の豊かさをもたらします。

認知症予防を通してご家族と会話する、同じ取り組みをする仲間と交流する、共同作業を行う、多くの人に成果を発表する機会をもつなどの工夫は大切です。

5.ご本人が望んで生活に取り入れる

認知症予防で一番大切なのは、ご本人が無理なく続けられることです。

どれだけ効果がある予防法でも、ご本人が嫌がったり、高価な材料が必要だったりしては、長く続けることは難しくなるでしょう。

パチンコや将棋など、特に認知症予防と銘打っていなくても、ご本人が大好きな趣味があれば、それを続けられる環境を整えることがすなわち認知症予防になります。

ご本人が無理なく取り入れ、楽しみながら継続できる予防法を選びましょう。

 

そして介護をするあなたに

認知症の方の介護は本当に大変です。それは私も介護の現場で身にしみて感じています。

何度も何度も同じ事を聞いてこられるとそれだけで参ってしまいます。

家族で介護する場合は心身の負担が大きく、疲労は溜まります。地域の支援やサービスを利用を検討する、ケアマネージャーに一度相談してみてもいいでしょう。

幸いなことに現代ではネットの普及で多くの情報を手に入れることが出来ます。同じような境遇の人と悩みを共有したり相談するのもいい方法だと思います。

大切なことは一人で抱え込まないこと、周りを頼ることです。是非試してみてください。

 

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